コラム
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【コンディショニング編】強くするだけでは、試合で力は発揮できない。
前回の【アスリート編】では、
「競技力を高めるためのウエイトトレーニング。」
について書きました。
アスリートにとってウエイトトレーニングは、
「ケガをしにくい身体をつくり、競技力を高める可能性を引き出すための手段。」
だと私は考えています。
しかし、
選手の身体を強くすれば、それだけで試合で良い結果が出るのでしょうか。
もちろん、そんなに単純ではありません。
どれだけ筋力が高まっていても、
どれだけ良いトレーニングができていても、
試合当日に疲労が残っていれば、本来の力を発揮することはできません。
だからこそ、アスリートのサポートには、
「コンディショニング」という考え方が必要になります。
コンディショニングとは何か。
コンディショニングという言葉は、非常に幅広く使われています。
・ストレッチをする。
・マッサージをする。
・体力を整える。
・疲労を取る。(食事や睡眠など)
そうしたイメージを持つ方も多いと思います。
もちろん、それらもコンディショニングの一部です。
しかし、私が考えるコンディショニングは、もっと広いものです。
競技で最高のパフォーマンスを発揮できる状態へ、
「身体と心」を整えていくこと。
これが、私の考える理想のコンディショニングです。
そのためには、
筋力だけを見ていてはいけません。
・柔軟性。(筋肉の張り、関節可動域など)
・疲労。(安静時心拍数、フェーズアングルなど)
・睡眠。
・食事。(摂取カロリー、PFCバランス、水分量など)
・精神状態。(心拍数の変化、睡眠の質など)
・競技練習の強度と量。
・補強練習の強度と量。
・試合までのスケジュール。
・移動。
・気温。
・ケガの状態。
・メンタル。(不安や緊張など)
さまざまなものを見ながら、
「今、この選手に何が必要なのか。」
を考える必要があります。

強化すればするほど良いわけではない。
トレーニングというと、
・強くする。
・速くする。
・筋力を上げる。
・体力を高める。
どうしても「プラスすること」に意識が向きます。
しかし、実際のアスリートサポートでは、
やり過ぎないこと。
も、とても重要です。
強化したい。
もっと筋力を上げたい。
もっと動けるようにしたい。
そう思ってトレーニングを積み重ねても、
疲労が抜けなければ競技力は下がります。
つまり、
トレーニングで得たものを、
試合で使える状態にしておかなければ意味がありません。
だから私は、
「何をやるか。」
だけではなく、
「何をやらないか。」
も考えます。
アスリートには、明確なオフシーズンがない。
私はこれまで、
・長距離走。
・マラソン。
・跳躍競技。
など、年間を通して多くの試合がある競技に関わってきました。
こうした競技には、
「ここから3カ月間は完全に強化期。」
「この期間は試合がないから身体づくりだけをする。」
という、分かりやすいオフシーズンがほとんどありません。
一年の中に、
・試合。
・練習。
・合宿や遠征。
・移動。
・疲労。
・回復。
そして、また次の試合。
これが繰り返されます。
だから、
「オフシーズンに強化して、シーズン中は維持する。」
という単純な考え方では、現場では対応できません。
強化・維持・回復・刺激。
私は選手の状態を見ながら、大きく4つの考え方を使い分けています。
強化する。
体力要素を高める必要がある時期。
・筋力。
・柔軟性。
・瞬発力。
・支持力。
など。
その選手に足りない要素を見ながら、必要な刺激を入れていきます。
維持する。
すでに持っている体力を落とさないようにする時期。
試合が続く時期などは、
向上させることより、
落とさないこと。
が重要になることもあります。
回復させる。
疲労が大きい時には、強化よりも回復を優先します。
身体を整える。
可動域を戻す。
筋緊張を確認する。
負荷を落とす。
場合によっては、トレーニングを行わないこともあります。
刺激だけ入れる。
試合直前など、
筋力を高めたいわけではない。
疲労も残したくない。
しかし、身体には適度な刺激(神経回路への刺激)を入れておきたい。
そんな時期、タイミングがあります。
この、
強化・維持・回復・刺激。
を、その時々で使い分ける。
私は、これがコンディショニングを考える上で非常に重要だと思っています。
試合から逆算して考える。
アスリートサポートでは、
今日のトレーニングだけを見ていてはいけません。
・次の試合はいつなのか。
・その試合の重要度はどうなのか。
・今の疲労状態はどうなのか。
・競技練習の量はどうなのか。
・前回の試合からどのくらい回復しているのか。
そして、
試合当日に、どの状態をつくりたいのか。
ここから逆算して考えます。
例えば、
試合の3日前に非常に良いトレーニングができたとしても、
その疲労が試合当日に残れば、
それは「良いトレーニング」だったとは言えません。
アスリートにとって重要なのは、
トレーニングで良い数字を出すことではなく、
試合で力を発揮することです。
年単位で見れば、身体は少しずつ強くなっていることが理想。
ここで、もう一つ大切にしている考え方があります。
・試合前に負荷を下げる。
・疲労が大きければ回復を優先する。
・試合が続けば、維持に徹する。
その時々だけを見れば、
「強化していない期間」
も当然あります。
しかし、
年単位で身体を見た時には、少しずつ強くなっていることが理想です。
・去年より筋力がある。
・去年より身体を支えられる。
・去年より可動域が安定している。
・去年より疲労から戻るのが早い。
・去年よりケガをしにくくなっている。
こうした小さな積み重ねが、
数年後の大きな差になっていきます。
目の前の試合では、身体を最高の状態へ整える。
しかし、長い時間軸では、
選手の「身体そのもの」は少しずつ成長させていく。
私は、この二つを同時に考えることが大切だと思っています。
コンディショニングとは、
その日、その試合だけを整えることではありません。
短期では試合に合わせ、長期では身体を育て続ける。
そこまで考えることが、
本当の意味でのアスリートサポートだと思っています。
長距離選手のコンディショニング。
長距離走やマラソンでは、
日々の走行距離が非常に多くなります。
練習そのものが大きな身体的負荷です。
だから、
ウエイトトレーニングを追加することで、
さらに疲労を増やしてしまう可能性もあります。
一方で、
・左右差を整える。
・刺激の入りにくい筋群へ刺激を入れる。
・骨盤、体幹を安定させる。
・足関節や股関節周囲を強化する。
こうしたことが必要な場面は多々あります。
だからこそ、
「ウエイトトレーニングをやるか、やらないか。」
ではなく、
「今、この選手にどの程度の刺激が必要なのか。」
を考えます。
・試合が近ければ、強化ではなく刺激だけにする。
・疲労が大きければ、整えることを優先する。
・状態が良ければ、少し強い負荷を入れる。
同じ選手でも、毎回同じトレーニングにはなりません。
跳躍選手のコンディショニング。
跳躍競技では、
・助走。
・踏切。
・地面反力。
・瞬発力。
これらが大きく関わります。
そして、短時間で非常に大きな力を身体に受けます。
だから、
筋力や瞬発力を高めることは重要です。
しかし、試合直前まで高負荷のトレーニングを続ければ、
身体が重くなる。
反応が遅くなる。
疲労が残る。
そうした可能性もあります。
そこで、
試合に向けて、
負荷を落とす。
動作速度を上げる。
ジャンプ系の刺激を減らす。
回復を優先する。
など、
その選手の反応を見ながら調整していきます。
強くすることと、動ける状態にすることは、同じではありません。
ここがコンディショニングの難しさであり、面白さでもあります。
数字だけでは判断できない。
コンディショニングでは、
数字も大切です。
・体重。
・練習量。(例えば:走行距離。)
・筋力。(最大筋力、最大パワーなど)
・心拍数。
・睡眠時間。
さまざまなデータがあります。
しかし、
数字だけを見て選手の状態を判断することはできません。
・顔色。
・歩き方。
・身体の張り。
・エクササイズ動作。
・声のトーン。
・本人の感覚。
そして、
何気ない会話。
ここから分かることは非常に多いです。
「今日は少し疲れています。」
と言っていても、動きは良いことがあります。
逆に、
「大丈夫です。」
と言っていても、身体を見ると明らかにいつもと違うこともあります。
だから私は、
・データを見る。
・身体を見る。
・動きを見る。
そして、話を聞く。
このすべてを合わせて判断することを大切にしています。
トレーナーが主役になってはいけない。
アスリートをサポートしていると、
どうしてもトレーナー側も、
「自分のトレーニングで選手を強くしたい。」
という気持ちが出てきます。
しかし、
主役は選手です。
そして、
選手が結果を出す場所は、
トレーニングジムではありません。
試合です。
だから、
ウエイトトレーニングをやらせることが目的ではない。
筋力を上げることが目的でもない。
試合で、選手が持っている力を発揮できる状態をつくる。
そのために何が必要なのか。
そこを考えるのが、
スポーツトレーナーの仕事だと思っています。
コンディショニングとは、足し算だけではない。
アスリートのサポートを始めた頃の私は、
・強くする。
・鍛える。
・負荷を増やす。
そうした「足し算」の考え方が強かったと思います。
しかし、現場で選手を長く見ていると、
それだけではうまくいきません。
・足す時もある。
・維持する時もある。
・減らす時もある。
・休ませる時もある。
コンディショニングとは、足し算だけではなく、引き算も含めて考えること。
今の私は、そう考えています。
コンディショニングトレーニングとは。
私が考えるコンディショニングトレーニングとは、
「試合で最高のパフォーマンスを発揮するために、
身体と心を最適な状態へ整えていくこと。」
です。
筋力を上げることも、その一部。
身体を整えることも、その一部。
回復することも、その一部。
トレーニングを休むことさえ、その一部になることがあります。
大切なのは、
今、この選手に何が必要なのか。
そして、
試合当日に、どの状態をつくりたいのか。
そこから逆算することです。
さらに、
目の前の試合だけを見るのではなく、
年単位では、その選手の身体が少しずつ強くなっていること。
そこまで含めて考える。
これが、
私が現場で考えている
「コンディショニング」
です。
次回は、
【予防医学・健康美編】に戻り、
「生涯動ける身体をつくるウエイトトレーニング。」
について書いてみたいと思います。
アスリートとは少し違う、
一般の方や高齢者へのウエイトトレーニング。
しかし、
そこにも共通する身体づくりの考え方があります。
株式会社スポーティア
代表取締役
野村 幸紀