コラム
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【アスリート編】競技力を高めるためのウエイトトレーニング。
前回の【コンテスト編】では、
「身体を“魅せる”ためのウエイトトレーニング。」
について書きました。
コンテストでは、
「評価される身体をつくること。」
が目的だと書きました。
・筋肉を大きくする。
・バランスを整える。
・シルエットをつくる。
・必要な筋肉に、必要な刺激を入れる。
・身体を魅せる。
その結果、
「その身体そのものが評価される。」
しかし、
ボディメイク競技ではないスポーツ競技のアスリートでは、考え方が変わります。
筋肉を大きくすること、身体を魅せることが、最終目的ではありません。
スポーツ競技のアスリートにとってのウエイトトレーニングは、
「ケガをしにくい身体をつくり、競技力を高める土台をつくるための手段。」
だと私は考えています。
スポーツ競技のアスリートに必要なのは、
「競技で使う身体的体力要素の改善・強化」。
私はこれまで、
・長距離走選手。
・マラソン選手。
・跳躍選手(三段跳び・走高跳)。
・ゴルフ選手。
・野球選手。
・水泳選手。
・サッカー選手。
など、
さまざまなスポーツ競技のアスリート、プロ選手を含めサポートしてきました。
スポーツ競技が違えば、当然、必要な身体的体力要素、求められる身体も違います。
一方で、共通して必要となる体力要素もあります。
大切なのは、
そのスポーツ競技において、どのような体力要素が必要なのか。
そして、
その選手にとって、今どの体力要素の改善・強化が必要なのか。
ここを見極め、実践することです。

まずは、ケガをしにくい身体をつくる。
どれだけ高い能力を持っている選手でも、競技を続けられなければ意味がありません。
だから私は、アスリートへのウエイトトレーニング導入を考える時、
まず、
「ケガをしにくい身体をつくること。」
を大切にしています。
ウエイトトレーニングには、筋力だけではなく、身体を支える力や関節の安定性など、競技を支えるさまざまな体力要素へ刺激を与えられる大きな利点があります。
もちろん、ウエイトトレーニングを行えばケガを完全に防げるわけではありません。
スポーツにおけるケガには、競技量、疲労、接触、既往歴、技術など、さまざまな要因があります。
だからこそ私は、
ケガをゼロにするのではなく、ケガをしにくい身体の土台をつくる。
という考え方を大切にしています。
・身体を支える筋力と柔軟性。
・関節を安定させる筋力と柔軟性。
・左右差への対応。
・姿勢を保つ力、体幹力。
・大きな力を受け止める筋力と柔軟性。
こうした体力を高め、維持することは、スポーツ競技を続けるための土台になります。
特にアスリートは、日常生活では考えられないほど大きな力を身体に受けています。
・全力で走る。
・全力で跳ぶ。
・全力で止まる。
・全力で切り返す。
・全力で投げる。
・全力で振る。
競技レベルが上がるほど、身体への要求も大きくなります。
だからこそ、
競技動作を支える身体を、競技以外の時間で整え、強化しておく。
これが、アスリートにウエイトトレーニングを導入する大きな理由であり、役割だと考えています。
「大きくて強い筋肉」だけでは足りない。
アスリートにウエイトトレーニングを行う際、
「もっと重いウエイトを持たせた方がいいのでは?」
「もっと筋肉を大きくした方がいいのでは?」
と思われることがあります。
もちろん、筋力、特に最大筋力を高めることは重要です。
しかし、
強ければ強いほど競技力が上がる。
という単純な話ではありません。
大きな力を出せても、
その力を必要なタイミングで使えなければ競技にはつながりません。
身体をうまく支えられなければ、出力した力が分散してしまいます。
必要な関節可動域がなければ、理想的な動作をつくることも難しくなります。
だからこそ、
筋肉の大きさ、強さだけではなく、
「強くて、柔軟で、動ける身体」をつくる。
という考え方を大切にしています。
そして、
練習や試合を繰り返すアスリートにとっては、
そこから回復できる身体であること。
これも重要な体力の一つだと考えています。
整えて、動いて、負荷を持つ。
SPORTIAでは、
「整えて、動いて、負荷を持つ。」
という考え方を大切にしています。
これはアスリートでも同じです。
まず、身体が必要な範囲で動ける状態をつくる。
次に、自分の身体をコントロールできるようにする。
その上で、適切な負荷をかける。
いきなり重いものを持たせるのではありません。
・可動域。
・姿勢。
・支持力。
・バランス。
・動作。
そこを見た上で、
その選手に必要な負荷を考えます。
負荷を持つ前に、負荷を受け止められる身体をつくる。
これが重要です。
競技動作そのものを、ウエイトトレーニングで再現する必要はない。
ここも、私が非常に大切にしているところです。
競技力を高めたいからといって、
競技動作をそのままダンベルやバーベルで再現すればよいわけではありません。
・野球のスイングに似た動き。
・ゴルフのスイングに似た動き。
・ランニングに似た動き。
・ジャンプに似た動き。
それを負荷を持って行えば競技力が上がる、という単純なものではありません。
「競技動作は、競技練習で磨く。」
ウエイトトレーニングでは、
その競技動作を支える身体能力、身体的体力をつくる。
私は、この役割分担が大切だと考えています。
ウエイトトレーニングで、
・筋力を高める。
・支持力を高める。
・瞬発力を高める。
・体幹を安定させる。
そして、
その身体を競技練習の中で使えるようにしていく。
ウエイトトレーニングが主役になるのではなく、
競技を支えるために、ウエイトトレーニングを使う。
という考え方です。
長距離選手にも、ウエイトトレーニングは必要なのか。
長距離選手やマラソン選手については、
「筋肉がつくと身体が重くなるのでは?」
と考える方も少なくありません。
私は幸いにも、世界で戦う日本トップレベルの長距離・マラソン選手に携わる機会をいただいてきました。
その選手たちを見ていると、改めて感じることがあります。
走るための脚は、基本的に「走ること」でつくられる。
トップレベルのマラソン選手でも、驚くほど脚の筋肉は発達しています。
つまり、ウエイトトレーニングで「走る脚そのもの」をつくるわけではありません。
しかし、
・左右差を整える。
・競技動作だけでは十分な刺激が入りにくい筋群へ刺激を入れる。
・身体を支える力を補う。
こうした目的において、ウエイトトレーニングは非常に有効な手段になります。
・身体を支える股関節周囲の筋力。
・着地の衝撃を受け止める足関節や股関節周囲の筋力。
・骨盤や体幹を安定させる筋力。
・地面からの反力を効率よく受け取るための身体能力。
・長時間、姿勢を維持するための体力。
こうした部分をウエイトトレーニングで補うことが、
選手の持っている可能性をさらに引き出すきっかけになると考えています。
だから私は、
長距離選手にも、目的に合わせたウエイトトレーニングは必要。
と考えています。
跳躍選手には「瞬発力(パワー)」という体力要素が重要になる。
一方で、跳躍競技、三段跳びや走高跳ではどうでしょうか。
こちらも、世界で戦う日本トップレベルの選手をサポートさせていただく中で感じたことから書いてみます。
まず、跳躍競技は、
「競技スキル(技術)」が非常に重要です。
このスキルは、基本的に競技練習の中で磨くものです。
だから選手たちは、そこに多くの時間を使います。
助走で得たスピードを生かし、
短い接地時間の中で大きな地面反力を受け、
それを跳躍へつなげていく。
そこにはタイミングやフォーム、技術が大きく影響します。
その上で必要になる身体的体力要素の一つが、
「瞬発力(パワー)」です。
大きな力を、
必要なタイミングで、
素早く発揮する。
この能力を高めるために、ウエイトトレーニングを活用できると考えています。
高い筋力をつくるトレーニング。
その力を素早く発揮するトレーニング。
ジャンプなどの反発を利用するトレーニング。
それぞれを競技特性や選手の状態に合わせて組み合わせる。
土台となる筋力やパワーが高まれば、
競技スキルを発揮する可能性を、さらに広げることができます。
強化することだけが、アスリートサポートではない。
ここは次の、
「コンディショニング」
というテーマにもつながります。
アスリートに対するトレーニングというと、
・強くする。
・速くする。
・筋力を上げる。
そうした「強化」のイメージが強いと思います。
しかし、実際の現場では、それだけではありません。
選手は年間を通して試合があります。
特に、長距離走やマラソン、跳躍競技などは、
明確なオフシーズンがほとんどありません。
常に、
試合。
練習。
移動。
疲労。
回復。
その中で身体をつくっていかなければなりません。
だから、
今、強化する時期なのか。
維持する時期なのか。
回復を優先する時期なのか。
刺激だけを入れる時期なのか。
を考える必要があります。
アスリートへのウエイトトレーニングは、
単に強くするためだけのものではありません。
年間を通して、競技で力を発揮できる身体をつくるためのもの。
私は、そう考えています。
アスリートにおけるウエイトトレーニングとは。
今回のテーマをまとめると、
アスリートにおけるウエイトトレーニングの目的は、
「ケガをしにくい身体をつくり、競技力を高める可能性を引き出すこと。」
です。
筋肉を大きくすることが目的ではありません。
重いウエイトを持つことが目的でもありません。
・筋力を高める。
・身体を支える。
・動きを安定させる。
・力を受け止める。
・必要なタイミングで力を発揮する。
そして、
競技練習の中で、その身体を使えるようにしていく。
だから、
アスリートにとって、ウエイトトレーニングは「競技を支えるための身体づくり」です。
同じウエイトトレーニングでも、
コンテストとは目的がまったく違います。
そして、その目的が違えば、
トレーニングの考え方も変わります。
次回は、
「コンディショニングトレーニングとは何か。」
について、もう少し踏み込んで書いてみたいと思います。
年間を通して試合があるアスリートを、
いつ強化し、
いつ維持し、
いつ回復させるのか。
そして、
どうすれば、試合で一番良い状態をつくれるのか。
私が実際の現場で考えていることを書いてみたいと思います。
株式会社スポーティア
代表取締役
野村 幸紀