コラム
- コラム
【コンテスト編】身体を“魅せる”ためのウエイトトレーニング。
前回の【導入編】では、
「ウエイトトレーニングは、目的によって考え方が変わる。」
ということを書きました。
同じウエイトトレーニングでも、
対象者 ⇒ 誰に。
目的 ⇒ 何のために。
そして、
どのような身体をつくるために使うのか。
目的が変われば、負荷も、回数も、ボリュームも、種目も、動作も、頻度も変わります。
今回はその一つ目。
ボディビル、フィジーク、ベストボディなど、
「身体そのものを評価するコンテスト」
におけるウエイトトレーニングについて、私なりの考えを書いてみたいと思います。
コンテストでは「筋肉を大きくする」ことが目的になる。
ボディビルをはじめとするコンテストでは、少し特殊なことが起こります。
野球であれば、打つ、投げる、走る。
マラソンであれば、速く走る。
跳躍競技であれば、より高く、より遠くへ跳ぶ。
しかし、ボディビルなどのコンテストでは、
ウエイトトレーニングによってつくった「身体そのもの」、
つまり筋肉の大きさやバランスが評価されます。
ここが、他のスポーツ競技と大きく違うところです。
・筋肉を大きくする。
・筋肉のバランスを整える。
・ウエストとの対比をつくる。
・体脂肪を極限まで落とす。
・ポージングという魅せ方を練習する。
その中で、自分が出場するカテゴリーで求められる身体へ近づけていく。
つまり、コンテストでは、
ウエイトトレーニングを使って、身体をどうデザインするか。
という考え方が必要になります。
「重いものを持てる身体」と「評価される身体」は違う。
これは非常に重要なところです。
100kgを持てる。
150kgを持てる。
200kgを持てる。
もちろん、それは素晴らしい能力です。
しかし、
重いウエイトを持てることと、コンテストで評価される身体をつくることは同じではありません。
・どこの筋肉を発達させたいのか。
・その種目で、本当に狙っている筋肉へ刺激を入れられているのか。
・関節の動き、可動域、フォームはどうなのか。
・ポージングで筋肉をどう魅せるか。
コンテストを目的にするのであれば、
単純に、
「重いウエイトを持つ。」
だけでは足りません。
もちろん、重いウエイトを扱うトレーニングは重要です。
しかし、それ以上に、
「必要な筋肉に、必要な刺激を入れる。」
という考え方が重要になります。
私は、ここにコンテストにおけるウエイトトレーニングの面白さがあると思っています。
私自身も、コンテストに挑戦したから分かったことがある。
私は運動指導者としてウエイトトレーニングを指導するだけではなく、自分自身もコンテストに挑戦してきました。

実際に身体をつくり、
絞り、
ステージに立つ。
そこまで経験したことで、外から見ていた時とは違うものが見えました。
トレーニングだけではありません。
・食事。
・睡眠。
・回復。
・水分バランス。
・精神状態。
そして、
「自分の身体をどう魅せるのか。」
そこまで含めてコンテストです。
健康づくりのためのウエイトトレーニングとは、考え方がかなり違います。
競技力向上を目的としたアスリートのウエイトトレーニングとも違います。
同じダンベル。
同じバーベル。
同じマシンを使っていても、
目的が違えば、見ているものが違う。
自分自身でコンテストに挑戦した経験は、そのことをより深く理解するきっかけになりました。
だからこそ、ドーピングについても考えたい。
コンテストの世界について書くのであれば、私はこの問題を避けて通るべきではないと思っています。
ドーピングです。
近年、YouTubeやSNSを見ていても、ドーピングについて語られる機会が以前より増えたように感じます。
海外のボディビル界では以前から語られてきた問題ですが、日本でも決して遠い世界の話ではなくなってきたと感じています。
私は、誰か個人を批判したいわけではありません。
また、ここで特定の選手が使用している、使用していないという話をするつもりもありません。
それぞれの競技団体にはルールがあり、それぞれの選手には考え方があります。
ただ、一人の運動指導者として、
そして若いトレーナーたちにこの仕事の素晴らしさを伝えたい人間として、
考えなければならないことがあります。
それは、
「若い人たちから見て、何が成功に見えているのか。」
ということです。
大きな身体、知名度、お金。それだけが成功なのか。
・身体を大きくする。
・コンテストで結果を残す。プロになる。
・SNSのフォロワーが増える。
・YouTubeの再生回数が伸びる。
・スポンサーがつく。
・サプリメント、アパレル、ジム運営など、ビジネスでも成功する。
そうした姿を見て、
「自分もこうなりたい。」
と思う若者がいることは、決して悪いことではありません。
私自身、車もファッションも好きです。
仕事を頑張り、自分なりの生活スタイルにこだわることも好きです。
そして運動指導、プロスポーツトレーナーという仕事一本で生きてきた者として、
若いトレーナーから、
「こんな生き方をしてみたい。」
と思ってもらえる人間でありたいとも思っています。
だからこそ、私は「結果」だけを見せてはいけないと思っています。
成功には「そこへ至る過程」がある。
今の時代、SNSを開けば完成された身体がたくさん出てきます。
・大きな筋肉。
・絞り込まれた身体。
・華やかな生活。
・コンテストでの成功。
しかし、画面に映っているものだけが、その人のすべてではありません。
身体も同じです。
・どれだけ時間をかけたのか。
・何を食べてきたのか。
・どのようにトレーニングしてきたのか。
・どのような失敗をしたのか。
・何を選び、何を選ばなかったのか。
そして、
その身体をつくるために、何を代償としているのか。
そこまで考える必要があります。
特に若い人たちが身体づくりを始める時、
完成された結果だけを見て、
「これが普通なんだ。」
と思ってしまうことには危うさがあります。
私が伝えたいのは「ナチュラルが偉い」という話ではない。
ここは誤解されたくありません。
私は、
「ナチュラルだから偉い。」
「ドーピングをしているから人間として悪い。」
という単純な話をしたいわけではありません。
しかし、
身体に何を入れるのか。
その選択にどのようなリスクがあるのか。
その競技のルール上、何が認められているのか。
そして、
その姿を見た次の世代へ、何を伝えるのか。
ここについては、運動に関わる大人たちが考え続ける必要があると思っています。
身体をつくることは、本来とても素晴らしいものです。
だからこそ、
身体をつくることによって、
・健康を失う。
・人生の選択肢を狭める。
・若い人がリスクを十分理解しないまま同じものを求める。
そんな方向には進んでほしくない。
私は、そう思っています。
コンテストにおけるウエイトトレーニングとは。
今回のテーマに戻ります。
コンテストにおけるウエイトトレーニングの目的は、
「評価される身体をつくること。」
です。
だから、
・筋肥大を考える。
・筋肉への刺激を考える。
・ボリューム、つまりトレーニング量を考える。
・身体全体のシルエットを考える。
・弱点を分析する。
・ポージングを練習する。
そして、自分が出場するカテゴリーに合わせて身体をつくっていく。
ここでは、
「どれだけ重いウエイトを持ったか。」
よりも、
「そのトレーニングによって、身体がどう変わったのか。」
が重要になります。
これは、次回書く競技力向上を目的とするアスリートへのウエイトトレーニングとは大きく違います。
ウエイトトレーニングは、身体をつくるための刺激。
ウエイトトレーニングそのものには、
「ボディビル用」
「アスリート用」
「高齢者用」
という区別があるわけではありません。
バーベルはバーベルです。
ダンベルはダンベルです。
マシンはマシンです。
変わるのは、
誰に、何のために使うのか。
コンテスト選手であれば、
「評価される身体をつくるため。」
アスリートであれば、
「ケガをしない身体と競技力を高めるため。」
一般の方や高齢者であれば、
「生涯動ける身体をつくるため。」
同じウエイトトレーニングでも、目的によって答えは変わります。
だから面白い。
だから奥深い。
そして私は30年以上たった今でも、この運動法を学び続けています。
次回は、
【アスリート編】
「競技力を高めるためのウエイトトレーニング。」
について書いてみたいと思います。
筋肉を大きくすることと、
競技力を高めることは同じなのか。
長距離走選手。
マラソン選手。
跳躍選手。
ゴルフ選手。
野球選手。
私が実際に選手たちをサポートしてきた中で辿り着いた考えを書いてみたいと思います。
株式会社スポーティア
代表取締役
野村 幸紀