コラム
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名乗らずに、積み重ねる。
身体が変わる姿に、初心を思い出した日。
毎週水曜日の午前中は、メンタルクリニック(河野医院:福岡市中央区)にて非常勤運動指導。
その中で、現在約6カ月、私のマッスルトレーニングに参加してくださっている女性陣の変化にて、改めて感じる思いがあります。
最初の頃は、プログラムをこなすことが大変だったように思います。
しかし、今ではほぼ最後まで動けるようになってきました。
もちろん、すべてが急に変わったわけではありません。
週1回、無理のない範囲で、少しずつ身体に刺激を入れ続ける。
その積み重ねの中で、確実に体力が戻ってきているのを感じます。
ご本人の表情や言葉からも、身体が変わってきている実感が伝わってきます。
その姿を見た時、私はふと、2013年5月からこの場所に関わらせていただいた頃のことを思い出しました。

私は、メンタルクリニックで運動指導を行う際、基本的に自分から自己紹介をしません。
(※これは契約上の理由もあります。)
もちろん、最近では名前や仕事先を聞かれた時にはお伝えすることもあります。
しかし、基本的には私から自分の素性や実績を話すことはありません。
だからこそ、参加されている皆様からすれば、最初はきっと、
「あの人は誰だろう?」
という感じだと思います。
もしかすると、今もそう思っている方がいるかもしれません。
でも私は、それで良いと思っていました。
肩書きや実績を先に伝えて信頼してもらうのではなく、目の前の方の身体が少しずつ変わっていくことで信頼していただきたい。
そう思っていたからです。
非常勤スタッフとして関わらせていただいた当時、私は自分の中で一つの目標を立てました。
それは、
いつか、この方々が私のことを知った時に、
「あんな凄い人から指導を受けていたんだ」
と思ってもらえるような人間になろう。
という大きな目標です。
この目標は、誰にも話していません。
でも、私の中では大切な覚悟でした。
そのために、まず目標にしたのが、ベストボディジャパン福岡大会で優勝すること。
当時、私はすでにボディビルコンテストにおいて、福岡と九州のタイトルを頂いていました。
だから正直に言えば、ベストボディコンテストでもすぐに結果を出せるのでは!と思っていました。
しかし、現実はそんなに甘くありませんでした。
思うように結果が出ない・・・。
理想のカラダをつくれない・・・。
悩み、悔しい思いをしました。
それでも諦めずに挑戦を続け、ようやく福岡大会で優勝できたのは、2024年でした。
(※この年は、日本大会でトップ10に入ることができました。)
この目標を達成するために、10年以上かかりました。
もう一つ、私の中で目標にしたことがあります。
それは、
「誰もが知っているようなプロアスリートをサポートできる指導者になること。」
10年以上経った現在、日本トップレベルの陸上選手たちをサポートさせていただく機会に恵まれています。
選手たちが全日本選手権優勝・世界陸上出場・オリンピック出場・日本新記録更新という大きな目標に向かって日々取り組まれ、目標を達成していく過程を一緒に過ごせる環境にいます。
この選手たちがより有名アスリートになり、微力ながら関わらせて頂いている私のことを運動指導を受けて下さった方々が知った時、
「あの時の先生だ!」
と少し驚いてもらえたら嬉しい。
そんな思いが、私の中にあります。
最近、周りの方から、
「もうそろそろ経営に集中したら?」
と言われることが増えてきました。
もちろん、その考え方もよく分かります。
会社を継続していくためには、経営はとても大切です。
スタッフを育てることも、仕組みをつくることも、会社として成長していくためには必要なことです。
ただ、私は経営者になるために起業したわけではありません。
私は、現場で人の身体と向き合いたくて、この仕事を始めました。
目の前の方の身体が変わる。
できなかった動きができるようになる。
不安だった表情が少し明るくなる。
体力が戻り、日常生活が少し前向きになる。
その瞬間を見たくて、私はこの仕事を続けています。
だから私は、これからも現場にはこだわり続けたいと思っています。
もちろん、いつか私が裏方に回った方が、会社やお客様にとって良い状況になるのであれば、その時は考えると思います。
しかし、今の私にとって現場は、単なる仕事場ではありません。
自分自身を磨き続ける場所であり、運動指導者としての原点を確認する場所です。
同世代や後輩たちを見ても、年齢や立場とともに現場から離れていく人が増えてきました。
それぞれの生き方があります。
経営に専念する人。
人を育てる側に回る人。
仕組みをつくる人。
別の形で業界に関わる人。
どの選択も間違いではないと思います。
みんな生き方が違うからこそ、いろいろな選択があって良いと思っています。
ただ、私はやはり現場が好きです。
現場に立ち、目の前の一人の身体を見て、言葉をかけ、動きを修正し、少しずつ変化を積み重ねていく。
その時間の中に、自分の役割があると感じています。
今回、改めて感じたことは、肩書きや実績以上に大切なことです。
それは、
目の前の一人の身体が変わっていくこと。
最初はできなかった動きが、少しずつできるようになる。
不安そうだった表情が、少しずつ明るくなる。
身体を動かすことに対して、少しずつ前向きになっていく。
その変化を近くで感じられること。
これこそが、私にとっての運動指導の原点なのだと思います。
大会で結果を出すことも大切です。
トップアスリートをサポートすることも大切です。
会社として成長することも大切です。
しかし、どれだけ立場や環境が変わっても、最後に戻ってくるのは、目の前の一人です。
目の前の方の身体が、少しでも良くなること。
体力が戻ること。
気持ちが前向きになること。
その人の人生が、少しでも良い方向に進むこと。
そこに関われることが、私にとって一番の喜びです。
私は、自分から大きく名乗るタイプではありません。
もちろん、仕事として必要な場面では、実績や考え方を伝えることも大切です。
しかし本質的には、言葉よりも、日々の積み重ねで伝える指導者でありたいと思っています。
名乗らずに、積み重ねる。
語りすぎずに、目の前の人の身体と向き合う。
肩書きよりも、指導の中身で信頼される。
その姿勢を、これからも大切にしていきたいと思います。
今回、女性陣の体力が少しずつ回復している姿を見て、私は2013年当時の自分の思いを思い出しました。
あの頃、誰にも話さずに心の中に持っていた覚悟。
「あんな凄い方から指導してもらっていたんだ」と、いつか思ってもらえるように精進しよう。
その気持ちは、今も変わっていません。
むしろ、年齢を重ね、経験を積んだからこそ、より強くなっている気がします。
まだまだ足りないことばかりです。
もっと学ばなければいけません。
もっと磨かなければいけません。
もっと本物であり続けなければいけません。
運動指導とは、単に筋肉を鍛えることではありません。
身体を通して、その人の未来に関わることです。
体力が戻ることで、生活が変わる。
身体が動くことで、気持ちが変わる。
気持ちが変わることで、人生の見え方が変わる。
私は、運動にはその力があると信じています。
だからこそ、これからも目の前の一人と真剣に向き合い、積み重ねていきたいと思います。
名乗らずに、積み重ねる。
そしていつか、
「あの人は本物だった」
そう思っていただけるように。
今回もまた、初心を思い出させていただいた一日でした。
株式会社スポーティア
代表取締役
野村 幸紀