コラム
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身体を見る前に、目的を聞く。
先日、昔の同僚から、突然メッセージが届きました。
内容は、
「博多区で、良いパーソナルトレーナー知らない?」
というものでした。
それだけです。
私は少し考えました。
なぜパーソナルトレーナーを探しているのだろう。
・身体に痛みがある方なのか。
・体力低下で困っている方なのか。
・運動を始めたい方なのか。
・何か医療的な不安がある方なのか。
そこで、
博多区周辺で思い当たるトレーナーを調べました。
以前、博多区にも店舗を出していた優秀なトレーナーがいたので調べてみたのですが、
現在はその店舗を閉めているようでした。
そのため、
「少し調べてみたけど、難しいようです。力になれなくてごめんね。」
と返信しました。
すると、
返ってきたのが、
「紹介したい120kgの方がいて、野村くんなら知っているかなと思ったの。」
という言葉でした。
ここで私は、
少し残念な気持ちになりました。
120kgだから、パーソナルトレーナーなのか。
もちろん、
120kgという体重だけを見れば、
健康上の問題を心配することもあると思います。
本人も、
体重を落としたいと思っているのかもしれません。
しかし、
私はまず、
「その方は、何に困っているのだろう。」
と思いました。
本人は、
・痩せたいのか。
・健康診断で何か指摘されたのか。
・膝や腰に痛みがあるのか。
・運動不足なのか。
・食生活に問題があるのか。
・睡眠なのか。
・仕事のストレスなのか。
あるいは、
・本人は何も困っていないのか。
そこを聞かずに、
「120kgだから、パーソナルトレーナー。」
と考えることに、
少し違和感がありました。

パーソナルトレーナーは、「痩せさせる人」ではない。
パーソナルトレーニングという言葉が広まって、
随分時間が経ちました。
しかし今でも、
パーソナルトレーナーと聞くと、
「ダイエットをさせる人。」
というイメージを持っている方は多いと思います。
もちろん、
ダイエットも大切な仕事の一つです。
しかし、
それだけではありません。
・姿勢を見る。
・柔軟性を見る。
・筋力を見る。
・動きを見る。
・生活習慣を聞く。
・身体の不調を確認する。
そして、
・本人が何を望んでいるのかを聞く。
その上で、
「この人には、何が必要なのか。」
を考える。
私は、
それがパーソナルトレーナーの仕事だと思っています。
そもそも、運動が必要なのか。
今回の120kgの方も、
本当に運動から始めるべきなのかは分かりません。
・食事の見直しが先かもしれない。
・医療機関での確認が必要かもしれない。
・睡眠や生活リズムの改善が必要かもしれない。
運動を始めるにしても、
いきなりパーソナルトレーニングをするのではなく、
まず、散歩や日常的に歩くことからかもしれません。
つまり、
「何をさせるか。」より先に、「何が必要なのか。」を考える。
ここが大切です。
運動法が主役になってはいけない。
私は以前から、
何度も書いてきました。
大切なのは、運動法ではなく「目的」です。
・ウエイトトレーニング。
・ピラティス。
・ヨガ。
・ランニング。
・ストレッチ。
・エアロビクス。
さまざまな運動法があります。
私は、
どの運動法が優れている、
どの運動法が劣っている、
という話にはあまり興味がありません。
広く身体運動として見れば、
どれも神経と筋肉を使い、
身体をコントロールする運動です。
違うのは、
・刺激の入れ方。
・負荷。
・動き。
・目的。
そして、
その運動法や指導者が得意としている領域です。
だから、
「私はピラティスだから。」
「私はウエイトトレーニングだから。」
「私はランニングだから。」
という考え方が強くなり過ぎると、
目の前の人より、
運動法の方が主役になってしまいます。
私は、
そこに少し怖さを感じます。
「この運動が一番良い。」という落とし穴。
フィットネス業界には、
どうしても、
・自分が学んできたもの。
・自分が得意なもの。
・自分が信じているもの。
を強く勧めたくなる傾向があります。
それ自体は、
悪いことではありません。
専門性を持つことは大切です。
私自身、
30年以上ウエイトトレーニングを学び、
指導してきました。
今でも、
非常に優れた運動法だと思っています。
しかし、
だからといって、
すべての人にウエイトトレーニングが必要だとは思っていません。
・必要なら使う。
・必要でなければ使わない。
・他の専門家が必要ならつなぐ。
・医療が必要なら、医師に診てもらう。
・栄養が必要なら、栄養の専門家の力を借りる。
・ケアが必要なら、治療家の力を借りる。
一人で全部やろうとしない。
これも、
専門家として大切なことだと思っています。
専門性とは、「何でもできること」ではない。
専門家というと、
何でも答えられる人。
何でもできる人。
そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし私は、
少し違うと思っています。
自分にできることと、できないことを理解していること。
これも、
専門性の一つです。
自分の専門領域で力を発揮する。
そして、
自分の専門外であれば、
信頼できる人につなぐ。
その方が、
結果的に目の前の人のためになります。
「どうすればよいと思う?」
今回、
昔の同僚からのメッセージを見ながら、
私が本当は、
どんな言葉をもらいたかったのだろうと考えました。
おそらく、
「120kgの方から相談されたんだけど、どうすれば良いと思う?」
だったのだと思います。
そう聞かれれば、
私は、その方の
・年齢。
・目的。
・既往歴。
・食生活。
・運動歴。
・生活習慣。
・本人の気持ち。
いろいろ聞いたと思います。
その上で、
・運動が必要なのか。
・食事なのか。
・医療なのか。
・誰につなぐのが良いのか。
一緒に考えたと思います。
身体を見る前に、目的を聞く。
体重が多いから、
ダイエット。
腰が痛いから、
ストレッチ。
姿勢が悪いから、
ピラティス。
筋力がないから、
ウエイトトレーニング。
そんなに単純ではありません。
同じ症状。
同じ体重。
同じ年齢。
でも、
背景は一人ひとり違います。
だから、
最初に聞くべきなのは、
「何をしたいですか?」
「何に困っていますか?」
なのだと思います。
フィットネス業界が、もっと発展するために。
今回の出来事を通して、
私は、
昔の同僚を批判したいわけではありません。
むしろ、
この業界全体が、
まだまだ、
「運動法を売る業界」
から抜け出せていないのかもしれない。
そんなことを考えました。
・ピラティスがすごい。
・ウエイトトレーニングがすごい。
・ヨガがすごい。
・ランニングがすごい。
それを伝えることも大切です。
しかし、
本当に大切なのは、
「その人にとって、今何が必要なのか。」
を考えること。
運動を主役にするのではなく、
人を主役にする。
私は、
これがフィットネス業界がもっと社会に必要とされるために、
大切な考え方だと思っています。
パーソナルトレーナーという仕事は、
運動を教える仕事です。
しかし、
運動を教える前に、
・目の前の人を見る。
・話を聞く。
・考える。
そして、
必要であれば、
自分以外の専門家につなぐ。
身体を見る前に、まず目的を聞く。
これからも、
そんな運動指導者でありたいと思います。
株式会社スポーティア
代表取締役
野村 幸紀